【ローンチイベント:Opening】AI普及の“ブレーキ”を外す。日本発「Privacy-First AI」が挑むデータ主権の壁
オープニングセッションでは、秘匿化技術や分散学習、秘密計算などを活用し、企業が機密データを外部に出さず、安全にAIを活用できる環境を構築していく構想が示されました。
生成AIの登場により、世界中のビジネスが劇的な変革の波に飲まれています。しかしその一方で、多くの日本企業が「自社の機密情報の漏洩」や「データ主権の喪失」という目に見えないリスクを前に、足を踏み出せずにいるのが実情です。
2026年7月31日、このジレンマを打破すべく、一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)が本格始動しました。本記事では、ローンチイベントのオープニングの模様をお届けします。日本がAIの領域で再び世界をリードするためのマインドと構想が熱く語られました。
① 登壇者
- 大塚 莉菜 氏(一般社団法人Endeavor Japan エグゼクティブディレクター / 司会)
- 花岡 悟一郎 氏(一般社団法人AIデータ主権共創機構 代表理事)
- マイケル・カインツバウアー 氏(一般社団法人AIデータ主権共創機構 理事)
- 長谷川 潤 氏(一般社団法人AIデータ主権共創機構 最高プロジェクト責任者)
- 岡田 隆太朗 氏(一般社団法人AIデータ主権共創機構 事務局長)※ビデオメッセージ登壇
② セッションサマリー
オープニングセッションでは、Endeavor Japanの大塚氏の進行のもと、CODASが設立された背景とこれからのAI社会に向けた中核的なビジョンが語られました。 テーマは「データを外に出さずにAIを活用する『Privacy-First AI』の社会実装」です。AIの有用性が広く認知される一方で、セキュリティへの不安から企業の「足が止まっている」現状をインターネットの黎明期に例えて指摘。モデルがコモディティ化していく中で「真の価値はデータにある」とし、一度流出すれば二度と戻らないデータを先端の秘匿化技術で守り抜き、誰もがリスクを恐れずAIの恩恵を受けられるインフラを創り出すという強い決意が発信されました。
③セッションの詳細
■ AI市場は「インターネットの黎明期」と同じ
セッションの冒頭、CODAS代表理事の花岡悟一郎氏がステージに立ち、CODAS設立の背景を語りました。花岡氏は現在のAIをめぐる熱狂と不安を、かつてのインターネット黎明期に例えます。
「我々は思い返してみると、いろいろな技術がその有用性から社会の注目を集め、使われるようになりました。それから『安全性はどうなのか』というところが気になって、そこで何かブレーキがかかってしまう。人類はずっとそれを繰り返していたわけです。インターネットもそうでした。黎明期をご存じの方は『そういえば初期は無法地帯だったな』と思いを馳せるのではないかと思います。AIも今まさにそういう状況です」(花岡氏)
「AI活用をどんどん拡大していく中で、『本当にこのまま使い続けていいんだろうか』『本当に対策を考えなければいけない』と思うと、そこで躊躇して足が止まってしまう。ただ、それは本当にもったいないことです」(花岡氏)
その上で花岡氏は、CODASの最大の目的を「データ主権を守りながら、組織と組織が安全に競争できる世界」を作ることだと定義しました。
「つまり我々のデータは我々のものなので、守るんだけれども、ちゃんとそれを有効利用できるようにお互いに心よくすることです。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、それはまさにやりたいことであり、そういう技術を作っていくということです」(花岡氏)
こうした世界を実現するために、先端的な暗号技術や分散学習、秘密計算を研究開発し、さらに「誰もが自由にこの輪に加われるような、オープンな枠組み」を透明性の高いガバナンス体制のもとで構築していくと語りました。
■ 規制ビジネスの最前線から見た「プライバシー保護技術」の価値
続いて理事のマイケル・カインツバウアー氏からもコメントが寄せられました。同氏は26年にわたり保険業界に身を置き、現在はAioi Nissay Dowa Europeとトヨタファイナンシャルサービスの欧州・アフリカ地域CEOを務めています。英オックスフォードにあるAIOI R&D LAB-OXFORDの運営も監督する同氏は、ビジネスの最前線から秘匿化技術の重要性を訴えました。
「規制の厳しいビジネスにおいては、将来を見据えた本人確認技術(identity-preserving technologies)を持つことが非常に重要だと私は考えています。だからこそ私はここにいるのです。会社が適切な、法令遵守に基づいた方法で事業を拡大できるよう支援しています」(マイケル氏)
また、会場に駆けつけることができなかった事務局長の岡田隆太朗氏からもビデオメッセージが寄せられ、「今非常に求められているPrivacy-First AI、プライバシーテックというところですが、これが日本初であるということも非常に重要な意味を帯びてきている状況かと思っています」と、活動の独自性と社会的な意義が強調されました。
■ 車が安全にたくさん走れるのは「エアバッグ」があるから
セッションの後半、最高プロジェクト責任者の長谷川潤氏が登壇しました。自身を「テクノロジーが大好きなオタク」と称し、グローバルで数々のスタートアップを牽引してきた経験から、AIを「安心・安全で毎日使うもの」にするための本質的なアプローチを語りました。
長谷川氏は、AI普及の鍵を「自動車」に例えて会場に問いかけます。
「車がいかにたくさん走ることができるようになるかというと、信号であったり保険であったりとか、ブレーキがついていること、エアバッグがついていること、ありとあらゆる『安心安全』に守られているからです。だからこそ多くの車が道を走っているわけです」(長谷川氏)
「同様のことがAIにおいても言えます。ですので、私たちは安心・安全を提供することが流通性を高めることだと考えています。プライバシー秘匿性は流通性の向上につながる。私たちの取り組みがきちんと世の中に浸透していくときには、多くの人々が安心してAIを利用できる環境が整っていくということです」(長谷川氏)
■ 「一度旅に出たデータは戻ってこない」コモディティ化するモデルと真の価値
さらに長谷川氏は、ビジネスにおける「真の価値」の所在について切り込みました。連日のように新たな大規模言語モデル(LLM)が登場し、各社がしのぎを削っていますが、長谷川氏は「モデル自体の価値はある時点ではコモディティ化する」と指摘します。
「最初のインフラレイヤーというのはコモディティ化しやすいと言われています。では本当に価値があるものは何でしょうか? それは皆さんが持っているデータですので、データとそのデータの活用方法をきちんと見出していくこと。それを実際に利用することですね。というのが本来の価値を生み出していくことにつながります」(長谷川氏)
しかし、利便性の裏側で自社の機密データはどうなっているのか。長谷川氏は、スタンフォード大学のリサーチを引き合いに出し、「主要なAIプロバイダーは皆さんが入力しているデータを学習に利用していることを公開しています。つまり世界中に皆さんの情報が拡散してしまうんですね」と警鐘を鳴らしました。
「AIというのは普通のデータベースのようなものではないです。なので『この行を削除してください』という形で削除できるのかというと、できません。なので、一度旅に出たデータはもう戻ってこないというのが実情なわけです」(長谷川氏)
さらに長谷川氏は、米国の「CLOUD Act(クラウド法)」に触れ、「米国に拠点を置いている会社が、どこにサーバーを持っていようと、政府が依頼した際にはデータを提供しなければならない」というリスクも提示しました。
「日本の企業の約7割がこの心配があるため、自社のデータをAIに投入していません。実際に活用していくことに躊躇しているという実情もございます。私たちが今後取り組んでいかなければいけないのは、皆さんが一個一個を気にして利用するよりも、私たちが提供する技術によってこうした壁を低くし、簡単に参入できるようにしていきたいと思っています」(長谷川氏)
データを動かさずにモデルを動かし、データ主権を保ったままAIを賢くする。日本発の「Privacy-First AI」の挑戦が、ここから力強く幕を開けました。
「CODAS Community」へのご参加・ご登録について
一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)では、「Privacy-First AI」基盤の構築と持続可能なAIエコシステムの発展に向け、研究者・エンジニア・法務・政策・ビジネス・市民など、立場を越えてオープンに集い、秘匿AIの未来を共に創る共創プラットフォーム「CODAS Community」のメンバーを募集しています。
■ 法人企業様のご参画
CODASの理念や取り組みにご賛同いただき、AIエコシステムの社会実装や標準づくり、共創プロジェクトを共に推進していただける法人企業様を募集しております。ご入会や連携に関するお問い合わせ・お申し込みは、下記フォームより承っております。
お問い合わせフォーム:https://codas-ai.org/contact
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CODASについて
一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)は、「安全・安心なAI社会」の実現を目指す非営利・中立の法人です。データプライバシー技術の研究開発と、そのオープンソース化による社会実装を推進しています。データを外部に出さずにAIを高度活用できる「Privacy-First AI」基盤を「創る・使う・広げる」ことを基本理念に掲げています。
- 代表理事:花岡 悟一郎
- 設立:2025年10月
- URL:https://codas-ai.org/jp
≪本件に関するお問い合わせ先≫
一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)イベント事務局 E-mail:info@codas-ai.org