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【ローンチイベント:Session2】「リスクを取らないことが最大のリスク」米Runway CEOが語る、AIが“インターネット”になる日

Runwayバレンズエラ氏は、世界モデルや企業データを守ったAIカスタマイズの重要性を語った。日本市場の可能性を評価する一方、世界で競争するにはリスクを取り、早く行動する姿勢が必要だと指摘した。

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世界中で生成AIが爆発的な普及を見せる中、その技術の最前線に立つグローバルプレイヤーは、日本の市場とポテンシャルをどう見ているのでしょうか。

本記事では、世界をリードする動画生成AI企業である米Runwayの共同CEO クリストバル・バレンズエラ(Cristóbal Valenzuela)氏と、CODAS最高プロジェクト責任者の長谷川潤氏による対談の模様をお届けします。

① 登壇者

  • クリストバル・バレンズエラ(Cristóbal Valenzuela)氏(Runway 共同CEO 兼 共同創業者)
  • 長谷川 潤 氏(一般社団法人AIデータ主権共創機構 最高プロジェクト責任者)

②セッションサマリー

本セッションでは、全編英語による国際対談が行われました。 創業以来、映像クリエイターと連携し最先端の動画生成AIを構築してきたRunway社の歩みや、テキストを処理する「言語モデル」と現実世界の物理法則をシミュレートする「世界モデル」の決定的な違いが詳細に語られました。 また、ハリウッドスタジオとの協業事例を交え、企業データを保護しながらAIをカスタマイズする手法を解説。バレンズエラ氏は、日本を「最大の市場の一つ」と高く評価する一方で、日本企業に欠けているのは「リスクを取る姿勢」であると指摘しました。AIがインターネットのように「社会インフラ」へと溶け込んでいく未来像が提示され、他者を待つのではなく今すぐ行動を起こすことの重要性が力強く語られています。

③セッションの詳細

■ メディア・エンタメ領域に目を向けたRunwayの原点

セッションの冒頭、長谷川氏は前夜に開催されたAIフェスティバルでの感動を会場に共有しました。

「ショート短編ムービーを流して実際に皆で鑑賞したのですが、ちょっともう度肝を抜かれました。現実世界に吸い込まれるかのような精度で、本当に素晴らしいものを作ることができるツールを準備しているのがRunway社です」(長谷川氏)

これを受け、バレンズエラ氏は約8年前にRunwayを立ち上げた背景を次のように語りました。

「AIがあらゆる経済を変革するだろうと主張される中で、当時十分に検討されていなかった、あるいは注目されていなかった分野の一つが『メディアエンターテインメントとクリエイティブの世界』でした。そこで私たちが過去8〜9年かけて構築してきたのは、非常にリアルで一貫性のある画像、動画、ゲームなど、あらゆる形態のエンターテインメントを制作するための研究基盤です」(バレンズエラ氏)

■ 言語モデルから「世界モデル」へ。現実をシミュレートするAI

話題は、Runwayが注力する「世界モデル(World Model)」の本質へと移ります。

「皆さんが使っている『大規模言語モデル』と私たちの『世界モデル』の違いは、言語はあくまで現実の『説明』に過ぎないという点にあります。私が『椅子』と言ったとしても、言語そのものは物理学や自然を本当に理解しているわけではありません」(バレンズエラ氏)

「真に高度なシステムを構築するには、現実に基づいてシステムを訓練する必要があります。観測データ(ビデオデータ、画像データなど)を作成し、そのデータをAIシステムに見せる。つまり、言語の抽象化ではなく、現実のシミュレートを学習しているのです」(バレンズエラ氏)

■ データを守りながらAIを育てる「カスタマイズ」の最前線

エンタープライズ顧客との協業において、Runway社がいかにデータ主権を守りながらモデルを最適化しているか、具体的な事例が明かされました。

「例えば、ハリウッドで最も重要なスタジオの一つである『ライオンズゲート』と緊密に連携し、彼らにとって非常に役立つ独自のカスタムツールを作成しています。特定のユースケースに合わせて、彼らが持っているデータからモデルを微調整(ファインチューニング)しているのです」(バレンズエラ氏)

さらにその応用範囲は、エンターテインメントにとどまりません。

「私たちはロボットデータを使った微調整も行っています。さらに、MRIデータ、つまり脳スキャンデータに基づいてビデオモデルを微調整することもできますし、ゲームデータを使うこともあります。重要なのは、そのデータは顧客固有のものとなり、他の種類のデータと統合または混合されることはないという点です。重み付け(モデルの理解)を所有し、データセンター内で自由にカスタマイズできる仕組みが重要です」(バレンズエラ氏)

■ 日本市場のポテンシャルと「リスクを回避するリスク」

日本はRunway社にとって世界第3位の市場です。バレンズエラ氏は日本の魅力をこう語ります。

「日本は当社にとって最大の市場の一つです。日本の知的財産、文化、創造性、芸術、そして工芸品に対する価値観は、非常に特別で独特であると言えるでしょう」(バレンズエラ氏)

一方で、長谷川氏から「外部の視点から見て、日本のAIエコシステムにまだ欠けていると感じる要素は何ですか?」と問われると、バレンズエラ氏は鋭い指摘を行いました。

「より多くの計算能力(コンピューティング)と、おそらく『もう少しリスクを取る姿勢』です。今の時代、数週間前まで研究室の中だけだった技術が、あっという間に何十億もの人々の手に渡ります」(バレンズエラ氏)

「市場は時にリーダーというよりフォロワーになる傾向があります。『誰かが先に行き、後からついてくる』というリスク回避的な考え方は、確かにリスクからは身を守れるかもしれませんが、その代償として本当に行き遅れてしまうことになります。最大の危険は、リスクを取らないことなのです」(バレンズエラ氏)

■ 5年後の未来:AIは「情報ハイウェイ」の歴史を繰り返す

「5年後、AIと社会の関係はどう変化しているか」という問いに対し、両者はAIが“インフラ”として透明化していく未来で意気投合しました。

「インターネット革命の初期の頃、人々は『電子メールの送信方法』の授業を受け、それを『情報ハイウェイ』と呼んでいました。しかし今日、誰かにメッセージを送る時に『情報ハイウェイを使う』とは言いません。AIに関しても同じです。近い将来、『AI映画を作っている』と言うのではなく、ごく自然に『映画を作っている』と言うようになるでしょう」(バレンズエラ氏)

「本当に同感です。運転中、私たちはその車にエアバッグが付いているかどうかを毎回確認しているでしょうか? 以前ほど慎重に考える必要はなくなりました。AIってそういうものなんですよね」(長谷川氏)

最後にバレンズエラ氏は、会場の企業や政府関係者に向けて、「待つ必要はありません。今こそその時です。未来はもう始まっています」と力強く呼びかけました。

④ 質疑応答内容

セッション後には、会場の参加者との質疑応答が行われました。

Q. V社 質問者 「日本にはAI関連のスタートアップ企業がたくさんありますが、独自の強みが薄く、同じような企業ばかりだと感じます。AIを活用して『かけがえのない企業』を創り出すために、最も重要な考え方は何でしょうか?」

A. クリストバル・バレンズエラ 氏 「私が10年前に『映画を作れるAIシステムを作りたい』と言った時の周囲の反応は、『人を透明にする装置を作りたい』と言った時と同じように、皆ただ笑うだけでした。イノベーションの初期段階は理解しにくく、誤解されるものです。 市場は安心感を求めるため、誰もが『次にやろうとしている当たり前のこと』をやってしまい、結果として皆が同じことをしているように感じてしまう。もしそういう状況に陥っていると感じたら、何か違う雰囲気の場所に行ってみるといいでしょう。『驚きや発見の感覚』を感じるなら、それは何か大きなことに向かっている証拠です。その感覚をじっくり育てていけば、きっと何かにたどり着くはずです」

Q. I団体 質問者 「御社のウェブサイトで、アプリ開発における『倫理的な側面』について言及されているのを拝見しました。倫理的な側面を最初から取り入れることについて、もう少し詳しく説明していただけますか?」

A. クリストバル・バレンズエラ 氏 「私たちは『安全性と責任』を非常に真剣に受け止めています。ディープフェイクやビデオ技術の悪用の可能性を最小限に抑えることは、私たちのシステム構築において中心的な役割を担っています。モデルをリリースする前には、徹底的な『レッドチーム演習』を実施します。意図的にモデルに望まない動作をさせ、リリース前にどのようにハッキングされる可能性があるかを理解しておく。それが当社の研究開発にとって非常に重要な要素であり、プロセスに深く組み込まれています」

■ 法人企業様のご参画

CODASの理念や取り組みにご賛同いただき、AIエコシステムの社会実装や標準づくり、共創プロジェクトを共に推進していただける法人企業様を募集しております。ご入会や連携に関するお問い合わせ・お申し込みは、下記フォームより承っております。

お問い合わせフォーム:https://codas-ai.org/contact

※件名に「会員の申込」とご明記のうえ、貴社の簡単なご紹介(事業内容等)を添えてご連絡ください。確認後、担当者よりご案内いたします。

■ 個人・一般の皆様のご参加

公式Discordおよびメールマガジンでは、勉強会・ワークショップ・ミートアップ等のイベントへの優先アクセスや、秘匿性技術・ルール標準化に関する最新の知見をお届けします。東京のリアル拠点での交流も含め、立場を問わずどなたでもご参加いただけます。

CODASについて

一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)は、「安全・安心なAI社会」の実現を目指す非営利・中立の法人です。データプライバシー技術の研究開発と、そのオープンソース化による社会実装を推進しています。データを外部に出さずにAIを高度活用できる「Privacy-First AI」基盤を「創る・使う・広げる」ことを基本理念に掲げています。


≪本件に関するお問い合わせ先≫

一般社団法人AIデータ主権共創機構(CODAS)イベント事務局 E-mail:info@codas-ai.org