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Privacy Tech · 詳細ガイド

秘密計算(マルチパーティ計算, MPC)

実用化が進む

複数の当事者が自分の秘密を明かさないまま、それらを合わせた計算結果だけを一緒に導き出す。

How it works

秘密分散型MPCの仕組み

ステップ 1 / 5

秘密の入力

各当事者(会社・病院など)が、他者に見せたくない自分のデータを持っている。

詳しい解説

「入力を見せずに一緒に計算する」

秘密計算(MPC)は、互いに信頼しない複数の当事者が、各自の秘密入力を明かさずに合意した関数の出力だけを共同で得る技術。古典的な例が「百万長者問題」(どちらが金持ちかを、金額を明かさず判定)。実現方式は大きく2系統: 秘密分散(値をランダムな破片に割り、破片の上で演算)と、Yao の混乱回路(1986)(関数を暗号化した真理値表として評価)。

誰を、どこまで信じるか

MPC の安全性は攻撃者モデルで決まる。半正直(semi-honest)はプロトコルには従うが盗み見る相手を、悪意(malicious)は逸脱・改ざんも行う相手を想定する。また過半数が正直と仮定する「正直多数」は効率的なプロトコルを許すが、「不正多数」でも安全にできる方式もある(その分重い)。用途のリスクに応じてこの2軸を選ぶ。

実世界で動いている

MPC は理論だけでない。ボストン女性労働力協議会は、企業が給与を明かさないまま市全体の男女賃金格差を集計するのに MPC を繰り返し用いてきた。Google の Private Join and Compute は2者が識別子を明かさず共通レコードの合計を計算する。MP-SPDZ は多数のプロトコルと攻撃者モデルを比較・実装できる研究用フレームワーク。

主要パラメータ・設計要素

秘密分散

値をランダムな破片に分けて配り、破片の上で加算・乗算を行う方式。多者・算術演算に向き、多くの MPC の土台。

混乱回路

Yao(1986)由来。関数を暗号化した回路として評価する2者向け方式。ブール回路・比較の多い処理に向く。

正直多数 / 不正多数

参加者の過半数が正直だと仮定するか否か。正直多数は高効率、不正多数でも安全にできるが計算・通信が重くなる。

半正直 / 悪意

攻撃者がプロトコルに従い盗み見るだけ(半正直)か、逸脱・改ざんも行う(悪意)か。悪意耐性は検証コストを伴う。

産業・ユースケース

この技術が実際に価値を生んでいる領域と、その使われ方。

金融・不正対策連合

複数銀行がマネーロンダリング検知や与信ベンチマークを、各社の顧客データを開示せずに共同計算する。秘密分散した入力上で集計だけを明かし、生の口座情報は互いに見えない。

公共・格差調査

ボストン市の男女賃金格差調査では、各社が給与明細を開示せずに秘密計算で全体の格差統計を算出した。個社データを一切集約せずに政策に使える数字を得た実例として知られる。

広告・効果測定

広告主とプラットフォームが、どのユーザーが広告を見て購入したかの照合をMPCで行う。双方のID一覧を突き合わせずに重複数やコンバージョン数だけを算出する。

医療・共同研究

複数の医療機関が患者コホートを持ち寄らずに、共同で有病率や治療効果の統計を計算する。各施設の記録は秘密分散されたまま、研究に必要な集計結果のみが明らかになる。

暗号鍵管理

しきい値署名では秘密鍵を複数当事者に分割し、誰も完全な鍵を保持しないままMPCで署名を生成する。カストディや認証局が単一障害点・単一漏洩点を排除するのに使う。

最新の動向

1

MP-SPDZ が半正直〜悪意、正直多数〜不正多数まで多数のプロトコルを一つの枠組みで比較でき、研究のデファクトになっている。

2

ボストン女性労働力協議会は2015年以降、複数回にわたり MPC で市全体の賃金格差を実測してきた。

3

プライベート集合積(PSI)ベースの照合が広告計測やコンプライアンスで実運用され、Google の Private Join and Compute はその代表例。

4

MPC を連合学習の安全な集約や、秘密分散と準同型暗号のハイブリッドと組み合わせる設計が広がっている。

ベンチマーク・実測の目安

実運用の反復回数

市全体の賃金格差を複数年にわたり集計

ボストン女性労働力協議会は 2015 年以降、実賃金データの MPC 集計を繰り返し実施した(Boston Women's Workforce Council / Boston University)。

最初の2者プロトコル

混乱回路を1986年に提案

Yao が2者間の安全計算を可能にする混乱回路を1986年に提案した(Yao, FOCS 1986)。

攻撃者モデルの網羅

半正直〜悪意、正直多数〜不正多数を実装

MP-SPDZ は半正直/悪意、正直多数/不正多数など幅広い安全モデルのプロトコルを実装している(MP-SPDZ ドキュメント, github.com/data61/MP-SPDZ)。

※数値は各出典に基づく参考値です。前提条件により大きく変わります。実装時は一次情報をご確認ください。

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